苫米地英人著『201冊目で私が一番伝えたかったこと』(ヴィレッジブックス)をとりあげます。

著者である苫米地博士は、この本の出版時(2015年5月)までに200冊以上の書籍を出版されてきたと言われています。

その数々の著作の中から、一番伝えたかった核心部分についてまとめたものが本書であるという位置づけになっています。

内容について概観した後、この本のレビューをしていきたいと思います。

「一番伝えたかったこと」とは?

端的にいうと、すべての人が自由意志をもって主体的に生き、豊かで充実した人生を歩んでほしいということのようです。

一見簡単なようでいて、実は今の世の中では、本当にそのような人生を送っている人は少なく、自由意志で選択しているつもりでも、実は誰かに選ばされていたものであることが多いということが指摘されています。

自由意志をもって主体的に生きるためのポイントは以下です。

  • ゴールの設定
  • ゴール達成にはコーチングが必要
  • エフィカシーを高く保つ
  • やりたいことしかやらない

詳しい内容は本書やこれまでの本に譲るとして、これらの内容は、これまでの著作を読んだことのある方にとっては、同じことの繰り返しと感じるかもしれません。もちろん著者の本を初めて読む人向けの配慮という面もあると思います。

しかし、繰り返し読むことで深く理解できたり、誤解していた点に気づくことなどがあるため、何度読んでも勉強になります。

似たような内容が書いてあるという批判に対しては、博士は「私は抽象度が低いと宣言しているようなもの」ということをしばしば言われています。

似たようなものでも抽象度が高ければ大きな違いに気がつきますが、抽象度が低ければ気が同じにしか見えない。逆に、一見大きく違う内容に見えるものでも、抽象度が高ければ同じようにしか見えず、抽象度が低ければ大きな違いに見える。といったことも起こりうると思います。

私は、一見同じようなことが書いてあっても、どういった点が重要であるかの優先順位付けに気づけたり、重要な概念を違った切り口から説明してあって新たな発見があるとかといったようなことがあるのではと感じています。

苫米地博士の書籍は、一見誰にでもわかるようにやさしく書かれているように見えますが、いざ一つ一つきちんと理解していこうとすると非常に高度なことが書かれていることに気がつくはずです。

博士は、著書は1冊に付き最低4回は読んでほしいということを言われていますが、その意味が理解できると思います。

 

もっと深く掘り下げて語りたいこと

次に、もっと深く掘り下げたいこととして語られているのは、

  • 人間の心はコンピュータの情報処理と同じ
  • ゴール達成に必要なこと
  • セルフイメージを変える
  • コーチング技術を学ぶこととコーチングを受けることは違う
  • ブリーフシステムを変える
  • 論理を極めるためにはディベート
  • 情報空間と物理空間の関係
  • 空観・仮観・中観について

内容が超盛りだくさんですね。これらも一つ一つ見ていくとすごく深い内容です。

博士は、人間の心はコンピュータの情報処理と同じで、脳の情報処理過程の現象に過ぎないと説かれています。

ここが博士が人間と機械を同視するとして批判される所以ですが、脳の情報処理を扱う認知科学(機能脳科学)の専門家なので仕方がないことなのかもしれません。

認知科学的アプローチから釈迦の教えにも行き着くのですが、これらは少しずつ学んでいくしかありません。

この章で私が気になったのは、コーチング技術を学ぶこととコーチングを受けることは違うということです。

コーチングを受けるというのは、プロのコーチが自分のためにコーチングを行ってくれることです。

しかし、コーチング技術を学ぶというのは、その理論を学んだに過ぎず、自分で実践に移さなければ、自分を変えることは難しいのです。

プロのコーチングを受けない場合は、セルフコーチングといって自分でコーチング理論を実践していく必要があります。一人で実践に移していくことは可能ですが、実際に結果最低でも1~3年程度は必要であるとされています。

自分の思考を変え、行動を変えて、望む結果を出していくには、それなりの時間がかかるということですね。

おそらく、多くの人たちは、本をサラッと読んだだけで、行動を変えるとか実践をするといったことはせずに、結果は出ないと悩んでいるのかもしれません。

しかし、実際には年単位の時間がかかるということは自覚しておいたほうがいいかもしれません。

ということで、次の章ではこの点についての私の経験などについて触れます。

 

苫米地理論の実践効果は?

実際に効果がでるまでには年単位の時間がかかるということですが、これを読んだとき、なるほど、と思いました。

私が苫米地博士の本に出会ったのは、4年ほど前になります。

その当時は自己啓発系の本を小バカにしていたものの、人生が行き詰まりつつあったことから人生を好転させたいなという思いで、半信半疑ながら読み始めました。

数冊読んでみると、非常に興味深く感じ、この著者の本はすべて読むに値すると思いました。

それから、書店やネットで見つけては手当たり次第に購入して読み始めました。

どれも長続きはしなかったものの、今までとは違った頭の使い方ができて、非常に有意義でした。

本を読むこと自体も楽しく、出版されているほとんどの本は読み終え、今は新しく出版されれば、都度購入して読むといったことをしています。

本を読み進めていくうちに、本だけでなく、DVD教材なども出されていることを知り、それらにも手を出すようになりました。特殊音源やアファメーションなども行いました。

これら教材についても今後触れていきます。

人生が好転しつつあるのかなと具体的に感じ始めたのは、筆者の場合は半年後くらいでしょうか。

もちろん科学的な因果関係は証明しようがありませんが、何が今までとは違う上昇スパイラルに入っているように感じたのでした。

そして、最初の本に出会ってから今で4年ほど経ちましたが、現在は当時では想像もできなかったような人生になっています。

もちろん、何の心配もないすべてが満ち足りた生活になっているというわけではありません。夢を実現する途中段階であり、まだまだ発展途上です。

しかし、仕事環境や出会う人のレベルが年々高くなってきて、望む未来に近づいているのは感じています。

毎日毎日本書に書かれてあるようなことを意識したり、DVDやCD教材などを聞いたりしていると、自分が気づかないうちに変化が起きているのではないか、というのが正直なところです。

 

おわりに

苫米地博士の本をはじめて読む方もそうでない方も、この本をきっかけとして、苫米地理論を全体像を確認し、より理解を深めるきっかけにしていただければと思います。

理論を学ぶことは当然必要なことですが、情報として知っているということと、実際に実践しているということは別ですので、その点は注意が必要です。

理論を学んだ上で、少しずつでも行動に移していくということも非常に重要です(自戒もこめて)。